コンテンツマーケティングにおける「誰が作るか」問題
コンテンツマーケティングで用いられるコンテンツは多岐にわたりますが、割合として多くを占めるのが「記事コンテンツ」です。
昨今のBtoBマーケティングの取り組みでは、自社のオウンドメディアやブログ、コラムなどに記事コンテンツを掲載して、サイトへの自然検索流入を図ったり、自社のハウスリストへメールマガジンを配信してサイト誘導を図ったりします。
その意味で、記事コンテンツはコンテンツマーケティングの取り組みの中で最も基本になるコンテンツの1つと言えます。
しかし、コンテンツマーケティングは多くの企業が取り組もうとしているものの、実際にはうまく機能しないケースも少なくありません。
その大きな理由には、有用なコンテンツを企画して生み出し続けるのが難しいという理由もありますが、単純にコストや労力の問題から、コンテンツの絶対数を増やすことができないからという理由もあります。
コンテンツの制作者は、大きく分ければ「自社で作るか(内製)」「外部人材に作ってもらうか(外注)」の二択が存在します。
内製する場合は、執筆する従業員の人件費を除けばほぼ費用がかかることはありません。しかし、もともと執筆が本業でない人にとって、業務に時間を割くのは簡単ではないでしょう。
外注する場合はスケジュールをコントロールできますが、それなりの費用がかかってしまいます。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、まとめると以下のようになります。内製・外注の中で誰に依頼するのかというのは後ほど触れていきます。
内製 | 外注 | |
依頼先 | ・マーケティング担当者 ・インハウスライター/エディター ・技術者 |
・代理店 ・制作会社 ・クラウドソーシングサイト ・フリーランス |
メリット | ・コストがかからない ・気軽に試すことができる |
・品質を担保しやすい ・自社内の業務負荷を下げて本業に集中できる ・スケジュールが予測しやすい |
デメリット | ・人材が限られる ・量産が難しい |
・制作コストがかかる ・内容によってはすり合わせのためのコミュニケーションコストがかかる |
なるべく内製化を試みるべき
「内製と外注のどちらがよいか」という疑問に対して、先にありきたりな結論を言ってしまうと、「コンテンツの種類によって使い分けるべき」というのが最適解です。
ただし、コンテンツ制作を支援してきた当社の観点から見ると、コンテンツはできる限り内製できるように努めるべきだと考えています(これを言ってしまうと当社の仕事を一部否定してしまうことにもなりますが…)。
理由の1つとして、コンテンツマーケティングではコンテンツの質が重要でありつつも、やはりどうしても「絶対数」が必要になるからです。
数が多ければよいというわけではありませんが、コンテンツマーケティングに成功している企業はそうでない企業に比べて、明らかに多くのコンテンツを作っており、内製のものも多く含まれます。
絶対数を確保する上で、すべて外注するのはコストやリードタイムからも現実的ではありません。外注は確実に必要ですが、自社で作ることも併せて検討するべきです。
内製でのコンテンツ制作方法
では、実際に記事コンテンツを内製化する場合はどのような選択肢があるでしょうか。代表例を挙げます。
1.マーケティング担当者自身が執筆
最も始めやすい方法です。コストもかからず社内調整も少ないので、試しに取り組んでみる場合に有効な手段です。
マーケティング担当者自身に十分な知識がある場合、この方法は候補になり得ますが、「自ら記事を書いて語れるほどは詳しくない」「本業が忙しくて書く時間がない」というケースもあるので、記事を量産するのは難しいでしょう。
2.インハウスライター・エディターが執筆
コンテンツマーケティングの取り組みが進んでいる企業では、マーケティング部門の中に、編集・執筆のスキルを持ったオウンドメディアやコンテンツの専任担当が設けられている場合もあります。こうした人材は、メディアや出版社、制作会社などの経験者であることも多いです。
もちろん、こうしたポジションを設けたり、そうした人材を採用するというのは一担当者で判断できることではありません。
しかし、内部に専門人材がいることは、コンテンツを強化するのに最も有効な選択肢であり、コンテンツマーケティングに力を入れる企業の中で、このような専任担当者を持っている企業は少なくないということを知っておくと良いでしょう。
3.技術者が執筆
当社は、主にBtoB IT企業のお客様のマーケティング支援を行っていますが、IT企業のように技術商材を扱う企業の場合、技術者などがブログ記事やコラム記事を書くケースも多く見られます。
IT企業はもともと技術の取り組みを発信する文化が強いため、コンテンツマーケティングの取り組みとは別に、すでに「技術ブログ」といった情報発信の媒体を持っていることも珍しくありません。
技術情報を発信することは、製品を検討している読者へ有益な情報を提供するという観点でも重要ですが、「この会社はしっかり技術に向き合っている」という安心感と信頼感を与えるうえでも有効です。
マーケティング担当者やインハウスライター・エディターなど、技術的なバックグラウンドがない人では書けない話題を書くこともできるので、内製化の際にぜひ加えたい選択肢です。
ただし、原稿の執筆は技術者の本業ではないため、量産は簡単ではありません。さらに、マーケティング部門の一存では決められず、技術部門との社内調整が必要になります。
記事コンテンツを内製する際の方法マーケティング担当者が執筆 | インハウスライター・エディターが執筆 | 技術者が執筆 | |
メリット | ・気軽に試すことができる ・社内調整が少ない |
・制作の専門職なので品質が安定する ・記事を量産しやすい |
・執筆領域が広がる ・もともと技術情報を発信している場合、協力を得やすい |
デメリット | ・記事を量産しにくい ・書けるテーマが担当者の知識に依存する |
・そもそもこの職種を設置しにくい | ・マーケティングの視点でのコンテンツを作りにくい ・協力が得られなければ量産しにくい |
外注でのコンテンツ制作方法
次にコンテンツを外注する際の依頼先をまとめます。ひと口に外注と言っても、依頼する先もいくつかの候補があります。それぞれに良し悪しがあります。
1.マーケティングエージェンシー/広告代理店
記事コンテンツを広告やデジタルマーケティングの他の施策などと連動して検討する場合は、代理店などに相談すると一括で対応してもらえるメリットがあります。
また、「コンテンツを何か作りたいがどうして良いかわからない」という企業にとっては、マーケティング施策全体のあるべき姿から、必要なコンテンツを描くなどプランニングを支援してくれる存在は心強いでしょう。
代理店の良いところは、「お任せできる」という点にあります。しかし、制作機能が自社にないことが一般的であり、制作実務部分は広告代理店から制作会社に依頼することになるため、制作会社に直接依頼するよりも費用は一般的には割高になります。
2.コンテンツ制作会社
もし「導入事例記事を作りたい」「ホワイトペーパーを作りたい」など目的が明確であれば、コンテンツ制作会社や編集プロダクションに依頼するのが最もスムーズであり、コストメリットも大きいでしょう。
記事執筆は後述のように個人事業主(フリーランス)に依頼することも可能です。
しかしコンテンツ制作会社であれば、個人への依頼と違い、執筆だけでなくデザインも一括して対応できたり、個人事業よりもキャパシティを持っているため、急な案件や大量の案件にも対応してもらえる確率は高いでしょう。
さらに、制作会社によっては、単に「作る」という部分だけでなく、自社に必要なコンテンツに関するコンサルティングのような上流工程に対応できる会社もあります。
ただし、コンテンツ制作会社は世の中には非常にたくさんありますので、自社が作りたい制作物やジャンルが得意であるか、どの程度対応してもらえるかを見極めたりする必要があります。
3.クラウドソーシングサイト
原稿執筆やデザインなどをクラウドソーシングで募集して人材をアサインするという方法があります。
クラウドソーシングサイトでは、クラウドワーカーの評価も見られるため、後述するように自力でフリーランスの人材を発掘するよりは、手間もリスクも少ないと言えます。
ただし、クラウドソーシングサイトというプラットフォームに依存することになるので、特定のワーカーと長期的かつ柔軟な契約関係を築きにくいというデメリットはあります。
4.フリーランス(個人事業主)
原稿執筆に関して、独自に探してコンタクトしたフリーランスに依頼する方法があります。相性の合う人材を見つけることができれば、最も安価かつ最も柔軟にコンテンツ制作を行うことができる手段です。
ただし、最大のデメリットは「そうした人材を見つけるのは非常に難しい」ということです。確かにフリーランス人材や副業人材を検索したりマッチングしたりするサービスはありますし、検索エンジンなどで調べればフリーランスの方を見つけること自体は難しくありません。
しかし、複数の制作人材リソースとコネクションがある代理店や制作会社とは違い、フリーランスはその人1人の力に依存してしまいます。
得意領域などは人によってさまざまであるため、自社の求めるコンテンツジャンルやテーマに対して納得の行くアウトプットを出してもらえるとは限りません。自社に合う人材は簡単には見つからないのが実情です。
また、すでに実力があり安定した仕事を得ているフリーランスであれば、常に仕事を探しているわけではないので、応募のプラットフォーム上で見つかりにくく、マッチングしにくいという背景もあります。
記事コンテンツの外注先の特徴マーケティングエージェンシー/広告代理店 | コンテンツ制作会社 | クラウドソーシングサイト | フリーランス(個人事業主) | |
メリット | ・上流から相談しやすい ・コンテンツ以外も一括して相談できる |
・コストと対応力のバランスが良い | ・希望する個人依頼先を探しやすい ・コストが安価 |
・契約面などが比較的柔軟 ・コストが安価 |
デメリット | ・制作会社よりも高い | ・自社に合う会社を探すのが難しい | ・個人への依頼なので制作会社ほどの柔軟性は期待できない。 ・プラットフォームに依存してしまう |
・自社に合う人材を探しにくい ・個人なので制作量に限界がある ・品質担保が難しい |
コスト | 高い | 普通 | 安い | 安い |
対応の柔軟性 | 高い | 会社による | 比較的低い | 低い |
コンテンツの種別に見る、内製・外注の判断
上記に挙げたように、コンテンツ制作を行う場合、さまざまな依頼先がある中、どのように選んでいくのが良いでしょうか。内製・外注に適した例としては以下のものが挙げられます。
内製を推奨するコンテンツ
内製しやすい領域としては、オウンドメディアやブログの記事などで、自社の商材に近い領域です。すでに自社内で知見があり、またブログは執筆分量も大きくないことから、比較的難易度は低いでしょう。
もう1つは、非常に専門性が高い技術領域の記事です。当社も技術者に取材してブログ記事執筆の案件を行うことがありますが、実際のプログラムコードを示したりなどかなり専門性を要する解説は技術者の方自身で書くほうが無難です。
これらは、インタビューして執筆する形ではインタビュイーがどうしても細部まで伝えきれなかったり、ライターも意図を完全にくみきれなかったりする場合があるからです。
外注を推奨するコンテンツ
外注を検討するべき領域は、執筆、デザイン、カメラマン撮影、印刷など複数の専門スタッフが関わる領域です。
特にDTPデザイン制作物やWebページ制作は、ブログ記事執筆などとは異なり、デザインなどを考慮しながらデザイナーと連携・コミュニケーションしつつ執筆する必要があるため、会社間で分業がしにくい領域です。
一方で、単純な記事執筆の領域であったとしても、自社の強みや特徴を訴求する記事の場合は、外部に書いてもらうことで新しい視点が得られることがあります。
ほかに、「語ることができるが自分で文章を書くことは苦手」という際も、執筆の外注がおすすめです。テーマについて語ってもらえる方に1時間程度インタビューを行い、それを記事化するなどして、手軽に記事コンテンツを作ることができます。
ホワイトペーパーやEブックなどの執筆も、比較的ページ数が多い資料などは文章の組み立てや読みやすさを配慮した構成などのスキルが求められるため、外注するほうが無難でしょう。
記事コンテンツ制作の外注には「執筆を外にお願いするもの」と考えがちですが、必ずしもそれだけではありません。「執筆は内製するがその編集だけをお願いする」という方法もあります。
つまり、自社で執筆した記事の文章のリライト・校正・校閲・推敲などを専門スタッフに行いブラッシュアップしてもらいます。これだけでも文章の質は大きく変わることがあります。
コンテンツ制作は複数の依頼先を持っておく
ここまでコンテンツ制作にて外注・内製する際の手段をまとめてきました。どのように作るかはコンテンツの種類によって変わるため、なるべく複数の選択肢を持っておくことが重要です。そうすることで最適なコストで自社のコンテンツを増やしていくことができるはずです。
もちろん、コストが全てではありません。コストを優先するあまり「安物買いの銭失い」に陥ってしまうケースもBtoBのコンテンツ制作ではしばしば見受けられますので、専門家の力を借りることも重要です。
コンテンツの質を判断する力を培いながら、ぜひ自社に最適なパートナーを見つけていただければと思います。